第79回第二言語習得研究会(関東)のプログラムのご案内

会員の皆様

次回第79回第二言語習得研究会のプログラムをご案内いたします。

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◆ 日時; 2011年10月15日(土) 午後1時30分からを予定しております(開場は1時となります)。

◆ 場所; お茶の水女子大学文教2号館302教室
*大学まで;http://www.ocha.ac.jp/common/image/access_map2.jpg
土曜のため、正門(東門)しか開いていません。
正門は春日通り沿いですので、最寄り駅は丸の内線の茗荷谷駅になります。
*学内マップ;http://www.ocha.ac.jp/access/campusmap_l.html
正門(東門)から入って一番遠い11番の建物です。

◆ 研究会参加について:2011年度(4月以降)初めていらっしゃる会員の方は、当日、受付にて年会費の半額 (1000円)をお納めいただきますようお願いいたします。
非会員の方も同様にお納めいただき、入会していただきますようお願いいたします。
なお、4月、6月にお越しくださいました方は、既に会費を納付済みですので、無料となります。

◆研究発表
1.「語用論の視点から見た「~てさしあげる」に関する考察
―映画・ドラマの脚本における使用例と母語話者へのアンケート調査から―」【1:30~2:15】
任麗潔 (にんれいけつ) 早稲田大学大学院日本語教育研究科 大学院生

【要旨】 本研究は、近年公開されている映画(10本)とドラマ(106本)の脚本から収集した使用33例と日本語母語話者20人を対象に行ったアンケート調査を通し、語用論の視点から「~てさしあげる」の使い方を明らかにしたものである。その結果、【1】二者間の「~てさしあげる」は、恩着せがましく聞こえることが多いため、冗談や怒りを表す場面以外は殆ど使われていない。【2】三者間の「~てさしあげる」は恩着せがましさより敬意を表すことが多く、特に①その場にいる外部の第三者に行動を行えと内部の部下に指示・命令をする際、②相手に属する第三者に行動を行えと目上の相手に助言・勧める際に、「~てさしあげる」が最も多く使われる。【3】「~てさしあげる」の使用には、話し手の属性(性別・年齢・性格など)と深く関っている。【4】現代社会における「~てさしあげる」の使用は、減少しつつあるという変遷がうかがわれる。などの傾向が見られた。

<15分休憩>

2.「メタ言語的内省が第二言語習得に与える効果―文章復元タスクによる受身の習得を通して―」 【2:30~3:15】
千葉千恵子(ちばちえこ) 国際交流基金 日本語試験センター 研究員

【要旨】 本研究では、意味重視の「文章復元タスク」に取り入れた「メタ言語的内省」が、日本語の「受身」の産出の正確さを高めることに有益かどうかを調べた。 メタ言語的内省(以下、内省)は、形式への焦点化を促し産出の正確さを高めると言われている。また「受身」は、正確な産出を行うには形式への焦点化が必要とされる。つまり、内省を引き出す処遇は、「受身」の産出の正確さを高める可能性が十分にあると考えられる。 実験では、日本語中級レベルの中国語母語話者を受身の習熟度別に分け、内省を行う群と行わない群に対して処遇を与え、事前・直後・遅延テストでの得点により指導の効果を測った。結果として、習熟度が低い学習者に産出の正確さを高める効果がみられた。特に、考える時間を与えられた産出よりも、時間制限のあるより自発的な産出において効果が明確に現れた。また、この効果は一週間後も持続することが明らかになった。

<15分休憩>

3.「留学による語用論的能力の変化」 【3:30~4:15】
深澤英美(ふかさわえみ) 上智大学大学院外国語学研究科言語学専攻 特別研究員

【要旨】 本研究の目的は3週間~5ヶ月間語学留学した大学生・短大生27名にほめへの返答の口頭談話完成テストを行い、留学前後の変化を明らかにすることである。テストでは「ほめた人(先生/友達)」「ほめられた物(靴/スピーチ)」「自己評価(ほめられた物を自分は良く思っている/思っていない)」の組み合わせで8状況を設定した。まず英語母語話者10名の結果は、ほめを受け入れる返答が多いが自己評価よりもほめた人が誰かによって受け入れるか否かを決めていた。一方、学習者は状況よりも自己評価によって返答し、留学後は前よりも“because”を使ってなぜそう思うかを説明するようになった。これも母語話者にはない返答であった。従って、学習者は留学後でも状況による返答の使い分けが母語話者のようにはできていないと言える。しかし自己評価の説明は、ほめへの同意・不同意によるフェイス侵害行為(Brown & Levinson, 1987)を軽減するための学習者独自の方策であると考えられる。


ご来場、お待ちしております。